秀808の平凡日誌

第5話 死闘

第5話 激戦



 大多数の『ウルフ』と『ティンバーマン』、それとヴァン達との距離は、じりじりと詰まっていく。

 そして戦いは切って落とされた。

「このっ!『ストレートスパイク』!」

 ヴァンは愛刀の「エグゼキューショナーズソード」を思い切り地面に叩きつけると、

 叩きつけたところから前方の『ウルフ』と『ティンバーマン』に向かって、地面から衝撃波が噴出していく。

 いきなりの奇襲に対処できず、回避できなかった数匹の『ウルフ』と『ティンバーマン』がその衝撃に巻き込まれ、吹き飛ばされた。

 その一撃を境に、戦闘が始まった。

 数匹の『ウルフ』が一斉にヴァンの首筋を噛み千切ろうと飛び掛る。

 だが、ヴァンはそのまま剣を力ずくで持ち上げると、飛び掛ってきた『ウルフ』達に『ソニックブロー』を浴びせ掛けた。

 剣から巻き起こった無数の風の刃に、『ウルフ』達は切り刻まれる他なかった。

 肉片がばらばらと落ちる。

 『ティンバーマン』が力ずくで殴り潰そうと寄ってくる前に、ラムサスがそれらを『フレイムストーム』で焼き払う。

 灼熱の入り混じった風は熱風と化し、一瞬にして『ティンバーマン』6体を灰と化した。

 ロレッタやアシャーも、『エントラップメントピアシング』や『ゾーンスマッシュ』で一体一体確実に始末していく。



 上空から、その様子をファントムは面白そうに見ていた。

 近くの岩場にはやはり、キャロルの姿も見える。

 ファントムはこの光景を見、キャロルに向かい言った。

「・・・爽快だな、キャロル」

「・・・?なぜですか?ファントム様?」

 ファントムはまるで幼子に教えるかのような口調で説明しはじめる。

「あの様子を見ていると、まるで下賎な者たちが命を使って、私を楽しませてくれているかのようだ。」

 ファントムは体の芯から恍惚とした震えを感じていた。

「・・・」

 キャロルは何も感じることがないのか、黙ってその様子を見つめている。

「しかし・・・あのラムサスとかいうウィザード。いささか邪魔だ。」

 ファントムは多少命令口調で言い放つ。

「・・・キャロル。あのウィザードの注意をお前にひき寄せ、始末しろ・・・できるな?」

「はい、ファントム様。」

 そういうと、キャロルは手持ちの弓『長い戦闘用弓』に『氷の矢』を抜き構えると、ラムサスにむけ一射を放った。

 その一撃に気づいたラムサスは間一髪、その矢を避けた。

「あそこにも敵か・・・ヴァン!こいつらは任せる!」

 そう言うと、『ヘイスト』を自分にかけ、キャロルに迫る。

 対するキャロルも、攻撃をやめ、険しい岩場の方に駆けていく。

 そんな様子を見ながら、ファントムはあることを思い出した。

「そうだ・・・アウグスタで私に傷をつけたあのランサー・・・借りは返しておかねばな・・・」

 そう言うと、『メテオシャワー』の唱昌を静かにはじめた・・・



(だいぶ数が減ったな・・・)

 ラムサスを欠いた3人で戦闘中、ヴァンはふと思った。

 最初はかなりの数がいた怪物達も。今は5匹しかいない。

 怪物達はおびえているのか、逃げだそうとしているものまでいる。

(一応安心・・・か・・・ファントムも・・・もういな・・・!)

 ヴァンは、明らかに上級呪文の唱昌をしているファントムを見て、とっさにロレッタの元へ駆け寄った。

「唱昌は終わった・・・私に傷をつけた罪、返させてもらうぞ!」

 ファントムが杖を上空にかかげると、はるか上空に魔力が集結していった。

 目標は、ロレッタだ。

「滅びろ!『メテオシャワー』!!」

 破壊の呪文は、今解き放たれた。



 ロレッタが気づいたときには、遅かった。

 彼女は上空から迫る『死』の予感を感じ取っていた。回避は間に合わない。

 だが、ふと自分を押しのけ、自分をかばうように剣を盾代わりに前に構えたヴァンが踊り出た。

「ヴァン!・・・」

 閃光が、熱気が、強大な魔力が、自分の目の前で炸裂した。

 ロレッタは、そこで意識を失った。


© Rakuten Group, Inc.